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―Capture1―

―5月23日―
「・・・はぁ」
退屈な数学の授業。先生の声が子守唄みたいに聞こえてくる所為でさっきから授業なんか耳に入ってこない。周りの友達も半分は眠りこけてたり、隣の席の子とお喋りしたりして私と同じように聞いていない。先生は気付いていないのか、さっきから黒板と睨めっこ状態だから仕方ないか。
「・・・はぁ」
何度目か分からない溜息を吐く。
「私・・・こんなに弱かったかな・・・」
勿論、今までもこんな気持ちにならなかったわけではない。けど今回は何か違う気がする。断言はできないが直感がそう言っている気がするのだ。
「もう・・・すぐなんだよね・・・」
嫌でも思い出してしまうあの日。嫌でも来るあの日。私の誕生日でありながら彼の・・・雪真の命日。
「6月・・・2日か・・・」
本当は楽しいはずの誕生日を迎えるはずだった去年。人生で一番思い出に残るはずだっただろう。
「あは・・・。本当、忘れられない誕生日・・・だよ・・・」
乾いた笑いと共に、また涙が溢れそうになる。我慢しないと・・・、そう思うが思うようにいかない。
「っ・・・っく・・・」
声を押し殺す。いくらざわついているとは言え、声をあげて泣いたら周りにも聞こえるだろう。
「大丈夫や・・・」
「くー・・・ちゃん・・・?」
「ええねん。な?また雪真のこと、思い出してんやろ?」
「うん・・・」
いつの間に気付いたのだろう。くーちゃんが優しく声をかけてくれていた。そして、うんうんと頷くと
「先生!藤瀬さんが気分悪いそうなので保健室連れて行きますわ」
「楠原?・・・分かった。行ってきなさい」
そう言って教室から連れ出してくれる。さすがはクラス委員長。頼もしいな。
「くーちゃん・・・」
「分かってる、屋上行こか?」
「・・・うん」
くーちゃんに連れられて屋上へ。くーちゃんには、雪真のことでいつも助けられてばかりいる。
「なぁ、愛奈?」
「・・・なぁに?」
「やっぱ・・・辛いんか?」
「うん…」
「・・・うちでいいなら聞いたる。話せる範囲でもええ。愛奈の気分が晴れるまで、うちに話したらええ」
「うん…」
くーちゃんの優しさに甘えるように口を開く。
「あのね・・・」
いつも大抵同じことばかり話すのに、何も言わずに聞いてくれるくーちゃん。楠原渚、それがくーちゃんの本名。中学校の入学の時に席が隣になって・・・。それからは雪真と結衣とくーちゃんと・・・。出会ってからは4人でよく行動してたっけ。あれからもう何年も経って・・・。雪真が・・・。雪真が死んで・・・。
「雪真・・・。雪・・・まぁ・・・」
「うん、うん。大丈夫や。今はうちしかおらん。泣いてもええんよ」
そう言いながら背中をさすってくれる。本当はくーちゃんも悲しいはずなのに・・・。くーちゃん…。雪真が死んだ日、泣いてたはずなのに…。ごめんね…。………………………。

結局、私が泣きやんだのは、それから30分くらい経ってからだった。
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―Capture1― 「巡る季節と過ぎ去りし夢」

―Capture1― 「巡る季節と過ぎ去りし夢」

―5月20日-

放課後の喧噪のなか、私は静かな一人図書館で過ごすことが多くなっていた。本を読むでもなく、ただ窓際の席に座りぼんやりと意味もなく外を眺めるだけ。結衣も誘うのだが部活動で来れないため仕方ないのだろう。大体あれからもうすぐ1年。もう1年も経ったのだ・・・。月日が経つのは早いもので、周囲も大分落ち着いてきた。勿論、私自身も気持ちの整理がついてきたのだろう。友人からは最初のうちは目も当てられなかったと言われたこともあった。だけど・・・一人の時間ができてしまうと決まって彼のことを思い出す。
「雪真・・・。どうしてあなたが・・・」
頬を温かいものが伝う。また、泣いてしまうのだろう。
「・・・泣いちゃダメなのに・・・」
分かってはいる。あの日から何度も泣かないと決めた。強くなろうとも誓った。だけど…「我慢することなんてできないよ・・・」
告白されて、たった1日。その告白を小さなころからずっと心待ちにしてて・・・。折角の誕生日を最高の形で祝えると思ったのに…。最愛の人を失ったのに我慢なんてできるはずない。
「・・・っく。・・・ふぇっ・・・」
声を押し殺して泣きじゃくる。周りには誰もいないし・・・少しくらいならいいよね?我慢するって決めたけど・・・、もう1年も経ったけど・・・。けど泣いて済むのであれば泣いてもいいよね?・・・そう思うと涙が止まらなくなる。…そうやって泣くときはいつも雪真が隣に、そう、隣で慰めてくれてるようなそんな錯覚さえ覚えた。
「せつ・・・っくっ・・・雪・・・まぁ・・・」
誰もいない図書館、私は一人泣き続けた・・・。

―5月21日―

「お姉ちゃん・・・大丈夫?」
「大丈夫よ。ほら心配しないで、ね?」
朝の食事の時間。昨日、家に帰ってからずっとこの調子。久々に昨日は泣いたせいで帰宅も遅れ結衣にも心配かけてしまった。
「けど・・・。お姉ちゃん・・・」
顔を覗き込んでくる。本当に結衣には心配かけてばかりだね。
「本当に大丈夫だよ。いつものことだから、ね?」
「・・・うん」
まだちょっと納得はしてないのだろう。けど、結衣もこれ以上は追及することもなくいつも通りに接してくれる。
「お姉ちゃん、マーガリン塗った方がいい?」
「ん、お願いね」
朝の食事当番である結衣が甲斐甲斐しく台所でマーガリンを塗っている。多分、結衣のことだし次は・・・
「お姉ちゃん、紅茶とコーヒーどっちにする?」
「紅茶でお願い。いつもと同じで甘めのミルクたっぷり」
「お姉ちゃんの紅茶じゃミルクが8割だもん。紅茶っていうのかなぁ・・・」
台所から、いつもの愚痴が聞こえてくる。けどこれも毎朝の見慣れた光景。勿論、彼がいた時から変わってない。・・・そう、変わってないのに・・・。
「・・・私達が・・・。私だけが変わっちゃったの・・・?」
「え?何か言った?お姉ちゃん」
「うぅん、何でもない」
嘘だ。本当は怖いだけ。彼を失ったことをいまだに認めていない自分が怖いだけなんだ。
そして今もずっと彼に会いたいと思ってる。いや、むしろ彼は死んでなんかいない、そうすら思っているのだ。
「・・・馬鹿みたい・・・」
少し自嘲気味に、だけど気持ちを整理するために息を吐き出す。彼はもういない。それだけは変わらない事実なのに・・・。
「お姉ちゃん?」
用意ができたのだろう。カップを持った結衣が戻ってきていた。
「心配しないで。ほら、早く食べないと遅刻するよ?」 
紅茶を煎れてくれた結衣にお礼を言いながら朝食に手を付ける。・・・いつもは分かる味も今日は何故か分からなかった。

あなたが僕を想うなら

―Prologue― 

「あ…あの!は…初めまして!!」
「…(コクコク)」
仕事の関係上放浪癖のある親父が連れてきた二人の少女。今日は僕の誕生日…だと言うことで久々に親父の帰ってくるのを楽しみにしていた僕は呆気にとられた。チャイムが鳴り、親父が帰ってきたと思い玄関を開けたところのこれだ。
「…誰?」
憮然と聞き返してしまう。
「あと、えっと!す、すすす…すみません!」
「いや、謝られても困るんだけどな…」
「…結衣」
「かと言って急に、しかもぼそっと自己紹介始めないでくれ」
「…(シュン)」
まったく、一体なんだというのだろうか。
「おぉ、さっそく仲良く話しているのか。関心関心」
戸惑っていると、少女二人の後ろから無精髭に覆われたおっさん、もとい親父が姿を現した。
「久しぶりだな、雪真。元気にしてたか?」
「親父…。元気にしてたよ。…ってそうじゃない!そうじゃないだろ!」
僕は二人の少女を指さす。
「この子達は一体なんなのさ!?」
「あぁ、言ってなかったか?今日から家で暮らすんだよ。お前の妹になるんだ」
「…へ?」
姉らしき方は多少遠慮がちに、妹らしき方は少し怯えながら頷いている。
「二人とも、自己紹介するんだ」
状況の掴めていない僕を無視して話を進める親父。
「えっと…、藤瀬愛奈です。あの、その…今日から私と妹がお世話になります…」
「え、あ…あぁ」
「…藤瀬結衣。・・・よろしくお願いします」
「うん、よろしく」
「うん、よろしく♪じゃなくて雪真。お前も自己紹介せんか」
「♪なんて付けてないだろ…。…親父から聞いてると思うけど、僕は羽宮雪真。改めてよろしく」
毎度のことながら、親父には本当に驚かされる。
「…けどさ、何で君たちが家に?」
「……」
沈黙が訪れる。少しの時間だったような、長いような分からない。ただ聞いてから失言だったことに気付いた。
「いや、ごめん。言いたくないのなら別に…」
「…パパも、ママも死んじゃったの…」
重い口を開きながら、それでも僕に聞こえるようにはっきりと。
「…ごめん…」
子供ながらにも悪いと思ったのだろう。結局細かい事は曖昧になったが真実だけは知ることができた。…きっとお互いその日から家族が増えてそんなことどうでもよくなったんだろう。彼女たちが家に来た理由も関係なかった。どうせ子供だった僕らにはわかる必要もないことだったから。だから僕らはその日から毎日一緒だった。何をするにしても常に一緒に行動、僕の宝物だって見せたりもした。特に愛奈とは同級生だったためか、結衣よりも一緒に行動することが多く、気付けば僕は愛奈に惹かれていた。・・・そしてあの日から7年・・・。



彼女の誕生日の前日、僕は愛奈を呼び出した。


僕は僕の誕生日に君たちと出会えたから・・・。


今までの気持ちを打ち明けて・・・。


愛奈も僕のことが好きで・・・。


明日は愛奈の誕生日・・・。


両想いに・・・二人が付き合って最初の誕生日になるはずだった・・・。


だから、こんな風に幸せが終わるなんて思ってもみなかったんだ。





「嘘…なんで・・・」
白を基調とした色で囲まれている一室。気付けば僕はここに在った。愛奈の誕生日を祝うために買い物に出てた僕はふと、その帰りに車道で蹲っている子猫に気付いたんだ。けど…。そこからの記憶は曖昧だった。寧ろ記憶と呼べるかさえ分からない。そう、気付けばここに在ったんだ。
「雪真ぁ…!ねぇ!目を開けてよ!…ねぇ…」
どうしたの?愛奈。僕はここにいるよ?
そう声をかけるのに届かない。
「本当に…雪真は優しすぎるよ…。だからって…。だからって死んだら何もならないじゃない!」
愛奈の目から大粒の涙がこぼれる。僕はそれを慰めることもできない。
「…御臨終です」
医師から淡々と告げられる言葉。
「雪・・・にぃ…?」
呆然と立ち尽くす結衣。
「嘘よ!嘘に決まってるわ!!」
悲しみと苦しみとその他いろいろな感情が混ざり合ってどうすればいいのか分からなくなって取り乱す愛奈。声を掛けてあげたい。大丈夫だよ、そう言ってあげたい。だけど体は動かなくて…。何故だろう。こんなにも近くにいるのに。
「雪真…。俺はお前の父親らしいこと一つもしてやれなかったよな…。ごめんな…ごめんな、雪真…」
親父…。何で自分を責めてるんだよ?悪くないだろ?
そう言いたかった。けど、苦しそうな顔をする親父をただ見ることしかできなくて…。…その時、初めて気付けたんだ。

アァ・・・

ソウヵ・・・

…ボクハ・・・

・・・ボクハシンダノヵ・・・。

気付いてしまうと後は直ぐだった。思考が完全に遮断され、色も温度も何もかもが灰になっていく。何かを感じることも、何かを思うことも、何かに触れるコトモ、ナニカに……………。そこで完全に無になった。
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